
渡部)はじめに
振り返れば、あの日あの場所で辻理事長とお会いしていなければ間違いなく今の私はここにいません。私にとって折々にかけがえのない気づきと前を向く強さをくださっただけでなく、人生の進路そのものを指し示して未来へと導いてくださった人生の大恩人です。あの日からいただいた言葉の数々は今も私を突き動かす揺るぎない原動力を与え続けてくれています。
偶然お隣に座った「カレーライス」の昼食(2018年)
初めてお会いしたのは、2018年に東京大学で開催された健生の全国大会でした。初めて参加した私にとって、その場(初の東京大学での集まり)はどこか緊張感の漂う空間でした。昼食時、偶然空いていた席に座ると同じテーブルにいらっしゃったのが辻理事長でした(その時はどなたかも存じ上げず、つい軽口で話しかけてしまったのですが)。
しかも気さくに応えてくださただけでなく、直々に二つ三つ端的なご指導を賜りました。そして「都心部で活動するのは何かと大変だろうけれど、あなたのような人に頑張ってもらいたい」その温かい一言がどれほど私の背中を押してくれたか分かりません。あの時食べたカレーライスの味といただいた言葉は今も鮮明に心に残っています。
そして、もう一つ思い出したことがあります。初めて Liaison(リエゾン)の名刺をお渡しした時、辻理事長は名刺をご覧になり、「リエゾンはフランス語ですか」と尋ねてくださいました。私が「はい。フランス語で“つながり”や“橋渡し”という意味で団体名にしました」とお話しすると、
「素敵な名前ですね。まさしくこれから必要なことなので頑張ってください」
と仰ってくださいました。振り返れば、私たちが掲げるリエゾンという名前の意味を最初に尋ね、その活動の方向性を温かく受け止めてくださったのも辻理事長でした。
今、医療・介護・福祉だけでなく、健康・生きがい、社会参加、地域活動などをつなぎながら活動を続けていると、あの時の「まさしくこれから必要なこと」という言葉が、以前にも増して心に響きます。当時は何気ない会話の一つとして受け止めていた言葉が年月を経て現在の活動そのものを励ましてくださる言葉になっているように感じています。
節目ごとにいただいた温かいお心遣い(2019年〜2020年)
翌2019年も様々な場面でお話しさせていただく機会に恵まれました。こんなこともあった…私の恩師とのご縁が巡り巡って繋がったある著名な先生のお話をさせてもらった際に話された言葉を覚えている。「(その先生に)直接お会いしたこともお話ししたこともないので分からないですが、メスを持たなくとも達人の境地に至ったのではないか」と、深く味わい深い雑感を語ってくださいました。その独自の視点と、どこかユーモアを交えながら温かく見守ってくださる姿勢に改めて懐の深さを感じた出来事でした。
さらに忘れられないのが、2020年の大きなイベントでの出来事です。私にとって場違いに感じるほど大きな会場で緊張していたところ、辻理事長がわざわざ前方から会場の後ろにいる私の元まで歩み寄ってくださり、「あなたと隣で一緒に」とお声をかけてくださったのです。大勢人がいる中で自分を見つけて気遣ってくださったその思いやりに、深い感動と思いやりをいただきました。
2040年に向けたエールと、これからの決意(2024年〜)
月日が流れ…これまでも様々な場所でご一緒させていただいてきましたが、直接リアルにお話しすることができたのは、2024年の全国大会が最後となりました。その際に、私がある女性の方とお会いしたことを話題にあげさせていただきました。第一線で活躍されている話題性のある方で、実は私が2020年のイベントで偶然ご一緒していた大切なご縁をいただいた仲間と繋がっていた方でもありました。そして何より、辻理事長が省庁時代に共に歩まれたご後輩でもあったのです。そのことをお伝えすると懐かしそうに目を細め「彼女はね、当時から本当に優秀な方でしたよ」と誇らしそうに、そして嬉しそうに教えてくださいました。
自分が引き寄せられた仲間との縁が、辻理事長が歩んできた歴史や信頼の輪と繋がっていた。あの時の繋がりが、ここでも繋がっていたのかという人の縁の不思議さに深く感動すると同時に、時代を切り拓く人たちを昔から見守り育んできた眼差しの温かさに触れ、胸が熱くなりました。そしてそのお話の締めくくりに、これからを生きる私に向けた、改めて深く重みのあるエールをいただいたのです。
「これから本当に大変だろうけれど、2040年に向けて頑張ってください」
2040年問題をはじめ、これから私たちが直面する社会課題の波は決して容易に乗り越えられるものではありません。現場で壁にぶつかり時に迷いそうになることさえあります。しかし初対面のあの日、カレーライスのお隣でいただき温かいお声掛けから一貫してかけ続けてくださる辻理事長の導きが、いつでも私の確かな道標となってくれています。
どんなに時代の変化が激しくとも、どんなに険しい道であっても「あなたのような人にこそ頑張ってもらいたい」と信じて背中を押してくださったあの眼差しがあるからこそ、私は揺らぐことなく己の果たすべき役割と真っ直ぐに向き合い続けることができています。もちろんこれからも…
おわりに
辻理事長からいただいた言葉の数々、そして背中で示してくださった教えにどう感謝を伝えればよいのか言葉が尽きません。私にできる最大の恩返しは、いただいたエールを胸に”2040年”そしてその先の未来に向けて現場で泥臭く挑み続けることだと思っています。
短くとも言葉を交わし、ご一緒できたあのひとときが本当に大好きでした。いただいた言葉も、温かい眼差しも、すべてが私の中でいまも生きています。この尊いご導きに深く感謝を申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。いただいたエールを胸に、これからも愚直に覚悟を持って己の道を切り拓いてまいります。

追記(2026年8月20日)―受け継がれているもの
ご縁をいただき、また多くの恩を受けながら今も折々に参加させていただき勉強を続けている研修会で胸に深く残る一幕がありました。その先生のお話の中で、「辻先生がいたからこそ、今の地域包括ケアシステムがある」、そして在宅医療もその大きな流れの中で今日まで受け継がれてきたという趣旨のお話がありました。その話を伺いながら不思議なことにお話の中に登場する方々の多くがこれまで私自身もご縁をいただいてきた先生方でした。先に触れた先生から続く流れ、その薫陶を受けた先生方、そして辻理事長の志をも受け継ぎ、今なお第一線で歩んでおられる方々…
一人ひとりの顔や声が次々と浮かんできました。
それぞれ別々の出会いだと思っていたご縁が、振り返れば一つの大きな流れの中でつながっていた。そのことに改めて気づいた瞬間、胸に込み上げるものがあり1人目頭が熱くなりました。僭越ながら帰りがけにどうしてもお礼を申し上げたく、先生のもとへご挨拶に伺いました。今日のお話への感謝と思いをお伝えしたところ、また力強く、そして温かい言葉をかけてくださいました。その言葉を受けた瞬間、堪えていたものがあふれ涙を抑えることができませんでした。我慢が出来ず足早に離れてしまったうえ、ふと我に返れば研修会場でもあり、大変失礼をしてしまったと思います。しかし同時に、改めて強く感じました。
時代を創ってこられた先生方とご縁をいただき、その背中を見ながら学び、導いていただいてきたこの道を私はこれからもしっかりと歩んでいきたいと。
地域包括ケアも、在宅医療も、フレイル予防も、誰か一人によって突然生まれたものではないと。先人たちが時代の先を見据え、幾つもの壁を越えながら築いてきたものが次の世代へ、そしてさらに次の世代へと受け継がれてきたものなのだと思います。私自身はその大きな流れの中ではほんの小さな存在にすぎません。それでもいただいたご縁と言葉を大切にして自分にできることを一つひとつ積み重ねていきたいと強く思います。
そしていつの日か自分もまた誰かの背中をそっと押して次の世代へ何かを手渡すことができるように。辻理事長からいただいた「2040年に向けて頑張ってください」という言葉を改めて胸に刻みます。この道をこれからもしっかりと歩んでまいります。改めまして、これまで導いてくださった先生方、そして数々のご縁に、心より感謝申し上げます。
本当に、ありがとうございました。これからもずっと…
