日本認知症予防学会が制定、日本記念日協会に申請し、認定されたものです。その記念式典での日本認知症予防学会代表理事、鳥取大学医学部認知症予防学講座の浦上克哉教授の講演の一部を紹介します。
■認知症が減少する一方で軽度認知障害(MCI)は増加
10年前の報告では、認知症の人は2025年に約675~730万人になると予想されていました。しかし、今年発表された報告では認知症の人は約472万人と、予想よりも203~258万人ほど少なかったということです。
一方、軽度認知障害(MCI)については、2010年の時点で約380万人と推計されていましたが、今年発表された報告では、2022年の時点で約560万人と推計され10年ほどで約180万人増えました。つまり、認知症の人は減った一方で、MCIの人が同じくらい増えたということです。
MCIは認知症の一歩手前の状態です。認知症予防をすることで正常の状態に戻ることができます。今後MCIの人の増加が予測されていますから、今まで以上にMCIへの対策が重要になってきます。
■認知症予防の「一次予防」「二次予防」「三次予防」3段階
認知症予防には、健康な人がMCIや認知症にならないようにする「一次予防」、MCIの人が認知症にならずに正常に戻るようにする「二次予防」、認知症になっても症状の進行が緩やかになるようにする「三次予防」もあります。
一次予防から三次予防をトータルに行うことで、『共生社会の実現を推進するための認知症基本法』が目指す共生社会が実現できると考えるとのことです。認知症基本法は、2023年の認知症予防の日に成立しました。
これを受けて、国は2024年秋ごろに基本計画を示すべく動いているようですが、鳥取県ではいち早く取り組み内容をまとめて、認知症対策を展開しているとのことです。
※鳥取認知症ポータルサイトより
https://www.pref.tottori.lg.jp/item/1361666.htm#itemid1361666
★奥歯を失うと認知症のリスクが高まるとする研究論文出る
九州大学大学院 歯科補綴(ほてつ)学 鮎川保則教授らの研究グループは、国内30市区町村の65歳以上の2万2,687人を対象に、奥歯のかみ合わせの状態とアルツハイマー型認知症の関連について調査しました。
その結果、4カ所の奥歯がすべてある人より、その一部やすべてがなくなった人のほうが、アルツハイマー型認知症の発症率が34%~54%高いことがわかりました。鮎川教授によれば、奥歯を失うと食事がままならず栄養が不十分になるなどして、発症リスクが高まると考えられる」とのことです。
※九州大学HPより
https://www.dent.kyushu-u.ac.jp/240427/
「可逆性」があるとされるMCI予防においても、健康長寿、フレイル予防の3つの柱である栄養(食・口腔)、身体活動・運動、社会参加が重要ということだと考えられます。中でも今回の奥歯のトピックは、オーラルフレイル予防が認知症予防においても重要な要素であることを示しているのではないでしょうか。